キャンパー、キャンプ場の皆様への新年のご挨拶
明けましておめでとうございます。
2019年末から世界中で猛威を奮った新型コロナウィルスが2023年に感染法上の分類で5類に移行して、日常生活は正常に戻りました。しかしながら4年間に及ぶコロナ禍を経て日本の社会は大きく変わりました。
コロナ禍によって世の中のデジタル化が促進されました。テレワークやオンライン会議がごく普通のこととなり、ペーパレス化が進むとともにハンコもなくなりました。キャッシュレス決裁が当たり前となり、現金も持ち歩かなくなりました。
その一方で感染症に対する予防意識が全般的に強まり、コロナ後も非接触の応対やソーシャルディスタンスが励行されています。コロナの前と後では人々の生活様式そのものが変わったと言っても過言ではありません。それは当然のことながら生活に密着したレジャーであるオートキャンプにも影響を与えずにはおかないでしょう。
この間にオートキャンプに影響を与えたのはコロナ禍だけではありません。2023年に厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」によると、これまで圧倒的にオートキャンプの中心を占めていた30代/40代のいわゆる「子育て世帯」は991万7000世帯と、初めて1000万世帯を下回りました。子育て世帯が全世帯に占める割合も、18.3%と、これも初めて20%を下回りました。さらに子育て世帯の中でも子供が「1人」だけの世帯が約半分を占めています。
他方、高齢者の割合は29.1%と過去最高となりました。これは世界的に見ても2位のイタリア24.5%を大きく上回っています。さらに日本の総人口は2011年以降、13年連続で減少し続けています。この世界でも例を見ない少子高齢化および人口減少の動向の中、最も新しい2023年の統計(オートキャンプ白書2024)によると、オートキャンプ参加人口は前年の650万人から600万人に減少しました。
こうした状況のなかでこれからのオートキャンプはどうなっていくのか大変気になるところです。
コロナ・パンデミックが発生して以来、オートキャンプは「安全・安心」なレジャーとして広く認知され、キャンプに関心のなかった多くの人々が新たにキャンプをするようになりました。なかでも顕著なのは、一人でキャンプするソロキャンパーが増えたことです。オートキャンプ人口に占めるソロキャンパーの割合は19.4パーセントと過去最高に達しました。ソロキャンパーは1人でゆっくり過ごすために家族で混みあう週末を避けて平日にキャンプする傾向があり、それがキャンプ場の年間を通した稼働率を押し上げる要因ともなっています。
また、1人のキャンパーが1年間にキャンプをした平均回数も5.5回と過去最多を記録しました。これはコロナ禍がきっかけでオートキャンプを始めた人々がコロナ後もオートキャンプを続けているためと思われます。
これらの現象を総括しますと、今後日本では人口減少と少子高齢化に伴いオートキャンプ人口も相応に減少していくものの、オートキャンプの頻度と密度は高まり、これまで以上に国民の生活に密着したレジャーとなって行くことが予想されます。1960年代の高度経済成長の真っただ中で誕生した日本のオートキャンプは、その誕生から半世紀余り、コロナ禍を経て新しい発展のステージを迎えているといえるでしょう。
こうした動向を踏まえ、当協会は昨年、二つのビッグイベントを実施しました。
一つ目は、2024年2月27日、28日に東京の国立オリンピック記念青少年総合センターで「キャンプ場未来創造会議2024」です。2020年春を最後にオンラインのみで行われてきたキャンプ場経営研究会を、4年ぶりに名称を変更して対面で実施しました。会場となった東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターに、北は北海道から南は広島まで、58施設、総勢88名のキャンプ場経営者・スタッフが集い、基調講演、シンポジウム、テーマ別分科会、懇親会の時間を通して運営、経営に関わる様々なテーマについて熱心に討議しました。
その成果を受けて、今年は「キャンプ場未来創造会議2025」を1月28日、29日に同じく国立オリンピック記念青少年総合センターで開催します。全国有数のキャンプ場の経営者・従業員が一堂に会し、オートキャンプ場の現状の把握と未来の創造に向けて熱い議論を交わすことが期待されます。
二つ目は、2024年11月8日~10日に静岡県の竜洋海洋公園オートキャンプ場で開催された第53回ジャパンキャンピングラリーです。オートキャンプの全国大会は、2020年からJAC近畿、JAC北海道、JAC関東と支部によって受け継がれてきましたが、昨年はJAC東海の主幹により実施されました。コロナ禍が明けて日本列島の中心に立地するキャンプ場を借り切って開催された大会には、北海道から近畿まで約150名のオートキャンプ愛好者が参加し、美しい自然の中で焚火トーク、餅つき大会、ローストビーフ作りなど様々なイベントを通して交流しました。
今年は第53回ジャパンキャンピングラリーがJAC東北の主幹で、10月11日、12日、青森県青森市のリンクステーションヒルズ雲谷(旧名称モヤヒルズオートキャンプ場)で開催されます。全国のキャンパーが東北地方のキャンプ場を訪れて互いに交流するまたとない機会となるでしょう。
国際関係では、4月25日から5月4日まで第95回FICC世界オートキャンプ大会が台湾新北市の龍門(ロンメン)キャンプリゾートで開催されます。2019年に福島県天栄村で開催されて以来5年ぶりにアジア地域で開催される世界大会には、ヨーロッパ各国をはじめ世界中のキャンパーが集い、イベント、パーティー、エクスカーションなどを通して交流します。台湾人のホスピタリティーは世界的に知られていますが、とりわけ日本人への好感度が高い台湾の人々は、は日本人キャンパーを歓迎しようと心待ちにしています。
当協会は今年も時代状況の変化に対応して、オートキャンプがより幅広い層の人々に浸透し、国民的レジャーとして発展するよう努めて参ります。
一般社団法人日本オートキャンプ協会
会長 明瀬 一裕