スノーピークの新たな展開:非上場以後の国内外活動
2024年2月、スノーピークは経営陣による自社株買収(MBO)を実施し、非上場化を果たした。この動きは、同社が短期的な株主利益に縛られず、柔軟な経営判断を可能にするためのものであった。スノーピークの代表である山井太氏は、業界の変化に迅速に対応し、長期的な成長戦略を推進するために、この決定が必要であったと説明している。(日本M&Aセンター)
◾️業界の変化への迅速な対応
スノーピークが非上場化を決断した背景には、アウトドア市場の急速な変化と成長がある。近年、キャンプやアウトドア活動への関心が急上昇しており、消費者のニーズも多様化している。特に、コロナ禍において自然との触れ合いを求める傾向が強まり、当時はアウトドア商品の需要が急激に増加した。こうした市場の動きに対して迅速に対応するためには、短期的な利益に縛られない経営判断が必要であった。
非上場化することで、スノーピークは以下のような点で柔軟な対応が可能になった:
- 製品開発のスピードアップ:新しい市場ニーズに迅速に応えるための製品開発が加速できる。
- 長期的な投資:キャンプ場の開発や新市場への進出など、長期的な視点での投資が可能になる。
- 経営の柔軟性:株主の短期的な利益を優先する必要がなく、経営陣の意志決定がスムーズに行える。
これにより、スノーピークはより迅速かつ柔軟に市場の変化に対応し、持続可能な成長を目指している。
◾️国内での活動
1.新潟アウトドア協会の設立
スノーピークは新潟県内の他のアウトドアメーカーと共に、「新潟アウトドア協会」の設立に加わった。この協会は、地域の観光や産業の振興、教育、文化、防災など多岐にわたる分野で連携を図り、地域の活性化を目指している。山井氏は、同協会の設立を「奇跡に近い」と述べ、協会の活動が地域全体に与えるポジティブな影響を強調した (にいがた経済新聞)
2.直営キャンプ場のオープン
スノーピークは国内でも新たなキャンプフィールドの展開を進めている。2024年には、宮崎県都城市と栃木県鹿沼市に直営キャンプ場をオープンした。これらのキャンプ場は、自然との共生をテーマに設計されており、訪れるキャンパーに独自のアウトドア体験を提供している。都城キャンプフィールドでは、地域の自然資源を活かしたプログラムやアクティビティが充実しており、鹿沼キャンプフィールドでは、家族連れや初心者にも楽しめる施設が整備されている 。
◾️海外での活動
1.アメリカ市場への本格進出
スノーピークはアメリカ市場においても積極的な展開を見せている。スノーピークの代表である山井太氏は2019年当時のインタビューで、米国市場での売上高を500億円に引き上げる目標を掲げ、そのために米国に移住して事業を推進していると語っていた。カリフォルニア州ロングビーチには米国初の直営キャンプフィールド「Snow Peak Long Beach Campfield」を2024年2月に開業した。このキャンプフィールドは、キャンプ愛好者に向けて自然と触れ合う新しい体験を提供することを目的としている。
さらに、ニューヨークの既存店舗をブルックリンに移転オープンし、キャンプギアを中心とした商品ラインナップを強化した。この新店舗は、広いスペースと開放的な内装が特徴で、キャンプ愛好者に向けた充実した商品を提供している (WWDJAPAN)。
2.中国市場での戦略拠点設置
スノーピークは中国市場でも積極的な展開を進めている。北京市にあるオフィスを「Snow Peak China HQ5」と名称変更し、戦略拠点として位置付けた。このオフィスは約400平米のフロアと約150平米のテラスを持ち、会議や打ち合わせに利用できるスペースを備えている。これにより、事業展開を円滑に進め、中国市場のニーズに対応したキャンプ用品やアパレルの販売、キャンプ場やグランピング施設の開発を進めている (Snow Peak)。
◾️まとめ
スノーピークは非上場化を経て、国内外で積極的な活動を展開している。新潟アウトドア協会への参加や新たなキャンプ場のオープンなど、地域活性化と革新的な体験の提供を進める一方、アメリカ市場への本格進出と現地での事業強化、中国市場での戦略拠点設置により、グローバルな成長を目指している。これらの取り組みは、スノーピークが持続可能な成長を実現するための重要なステップとなっている。
執筆:日本オートキャンプ協会編集部
参考引用元:
日本M&Aセンター
にいがた経済新聞
東洋経済オンライン
snowpeakプレスリリース