アフターコロナのインバウンドを考える 第2回
-外国人キャンパーの旅行・観光スタイルを中心に-
前回はわが国における訪日外国人旅行者数および外国人キャンパーの増加について、主として量的な側面からご紹介しました。今回は、上富良野町日の出公園オートキャンプ場を例に、本キャンプ場を利用した外国人キャンパーの出身国・地域やキャンプ場の利用実態等についてアンケート調査を行いましたので、概要について今回と次回の2回ご分けて紹介します。
■外国人キャンパーどこから来ているのか。
本キャンプ場を利用している外国人キャンパーの国籍・地域を見ると、台湾が全体の3/4を占めています。参考までに図1では全国および北海道への訪日外国人旅行者数の国・地域別構成を示していますが、台湾は全国(15.3%)、北海道(20.0%)となっており、本キャンプ場では台湾人の利用が突出しています。台湾にはオートキャンプ関連組織もあり、国際キャンピング・キャラバニング&モーターキャラバン連盟(FICC)主催の世界大会が開催されるなど、本来キャンプが盛んな地域であることも影響しているのではないかと考えられます。
台湾の次に多いのが、香港で約1割程度が利用しています。一方、訪日旅行者数が最も多い中国からはほとんど利用がありません。その他のアジア地域としてはシンガポール、マレーシア、タイ、その他地域としてはアメリカがそれぞれ若干名利用しています。また台湾と同様にキャンプの盛んな隣国韓国からの利用は見られません。
■外国人キャンパーアンケート調査の実施
本キャンプ場を利用している外国人キャンパーの利用実態を明らかにするため、2016年に以下の要領でアンケート調査を実施しました。
- 実施場所:上富良野町日の出公園オートキャンプ場
- 実施期間:2016年7月15日~8月15日
- 対象者 :外国人キャンパーグループの代表者
- 調査方法:キャンプ場受付時アンケート票(中国語、英語)を配布、チェックアウト時に回収
- 回収数:配布数:113票
以下、本アンケート調査の概要をご紹介します。
■主体はファミリー層
回答者(グループ代表者)の年代は、「40歳代(32,1%)」、「30歳代(31.3%)」がほぼ同程度で最も多い。キャンプの同行者は「配偶者(78人)」、「子供(57人)」が多く、同行者数も「3~5人」で全体の58.5%を占めています。こうしたことからいわゆるファミリー層が主体となっており、日本と同じ傾向を示しています。
■外国人キャンパーは訪日観光のベテラン
訪日経験では「4回以上(64.6%)」が過半数を占め、「2回目(10.6%)」、「3回目(9.4%)」を合わせると全体の84.9%がリピーターでした。しかも4回以上のヘビーユーザーが多くなっています。北海道への来訪では「初めて(54.0%)」が最も多いものの、「2回目」以上の方も約半数となっています。こうした傾向を見ると、日本観光や北海道観光をある程度経験した者が次の観光体験としてキャンプを選択しているというのが伺われます。
■キャンプ経験年数と北海道でのキャンプ経験
キャンプ経験年数(図6)を見ると、「1年未満(33.6%)」が最も多く、「1~4年(26.4%)」、「5~9年(18.2%)」が続いています。日本におけるキャンプ活動は他の海外旅行に比べ、キャンプ情報不足や宿泊手配が困難であることが懸念されるところですが、予想以上にキャンプ初心者の利用が多いようです。
北海道でのキャンプ経験(図7)を見ると、「初めて(83.0%)」と大半を占めているものの、2回目以上のリピーターも17%程度ありました。
■日本語は話せないが、英語は大丈夫
母国語(大半は中国語)以外に話すことができる言語(図8)は、「英語(82人)」で113人の73%の利用者が英語である程度のコミュニケーションできるようです。日本語を話せる利用者は少なく、13人(12%)にとどまっています。
■外国人キャンパーは長期滞在傾向
北海道内での宿泊数(図9)を見ると、「7~9泊(48.5%)」が約半数を占めています。さらに10泊以上が34.7%と全体の約4割に達しています。台湾からの一般的な北海道旅行パッケージツアーは4,5泊が一般的であることからも、外国人キャンパーの長期滞在が顕著です。
■北海道旅行の目的は「キャンプ」と「自然鑑賞」
北海道旅行の目的(図10)では、「自然鑑賞(90人)」、「キャンプ(82人)」が多くなっているのが特徴的です。また美瑛富良野地域に特徴的な「田園景観鑑賞」、「花畑鑑賞」を始め、「温泉」、「都市観光」、「食事」、「買い物」も約半数のキャンパーが観光の目的のひとつとして位置づけています。一方、サイクリング、トレッキング、カヌー、ラフティング等のいわゆるアウトドア・レクリエーションに対してはほとんど興味がないようです。
今回は、外国人キャンパーの属性や旅行・観光行動の特徴を中心にご紹介しました。次回(第3回)は実際のキャンプスタイルについてご紹介する予定です。
(執筆)
宮武清志(miyatake@readjust.co.jp)
株式会社リージャスト札幌支店長
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1953年北海道室蘭市生まれ
1988年から、“オートキャンプ場を核とした地域振興構想=オートリゾートネットワーク構想”推進のため、北海道において基幹施設となるオートキャンプ場整備および全道的なネットワークづくりに参画してきました。その間、NPO北海道オートキャンプ協会理事(~2019年)、札幌国際大学観光学部教員(~2021年)を兼務してきました。