第4回 業界分析2

キャンプ場の業界分析をしよう!2

こんにちは。早いものでコラムも4回目となりました。早速ですが、振り返りから参りましょう!

第1回目の結論は「国民の福利に貢献するキャンプ場は、長く営業していくことが大事!」とし、定性を保つには「組織化と収益性の向上が重要」としました。そして第2回目は市場分析をした結果、「キャンプ場の売上高は相対的に低い」ことが分かりました。
先月、3回目の寄稿では「キャンプ場の単価は低くはないが、稼働率が著しく低い」ことが分かりました。さて第4回目になる本稿では、前回に引き続いて業界分析をしていきたいと思います。


【連載スケジュール】

① RevPARの分析

RevPARとは(Revenue Per Available Room)とは、営業日の1区画の平均単価のことで、先述のADRは販売された区画の平均単価ですが、RevPARは販売されなかった営業日の区画も含めた平均単価、となります。

宿泊業界では最重要の収益性の指標となりますが、キャンプ場でRevPARという数値を用いて分析されることはこれまでに無かったと思いますですので慣れない方も多いと思いますが、業界の発展のためには、RevPARを用いて生産性を検証していくことは必須の概念かと思いますので、しっかりと学んでいきたいと思います。

RevPARは以下の計算式で求めることが出来ます。

 RevPAR=ADR×稼働率

例えば、

  • (ア) ADR5,000円のサイトを、稼働率40%で販売 RevPARは5,000×0.4=2,000円
  • (イ)ADR6,000円のサイトを、稼働率10%で販売 RevPARは6,000×0.1=600円
  • (ウ) ADR3,000円のサイトを、稼働率80%で販売 RevPARは3,000×0.8=2,400円

となります。少し説明を加えると、
(ア)は営業日1日で1区画2,000円(RevPAR=2,000)を売り上げ、営業日が200日あれば年間40万円を売上げる
(イ)は営業日1日で1区画600円を売上げ、営業日が200日あれば年間12万円を売上げる
(ウ)は営業日1日で1区画2,400円を売上げ、営業日が200日あれば年間48万円を売上げる
ということになります。

生産性は、ウ>ア>イとなり、(イ)はADR6,000円と高単価で販売したにも拘わらず、生産性が一番低くなっています。これは、単価が高ければ稼働は下がり単価が低ければ稼働が上がるという需要の変化によって生産性が変わるということを表しています。

具体例としてケニーズのADR、OCC(稼働率)、RevPARの相関関係をグラフにすると以下の通りです。

20年度はコロナでADR(販売された1区画の平均単価)を下げましたが、その後のキャンプ特需によって稼働が高まり、最終的な生産性であるRevPAR値(営業日あたりの1区画の平均単価)は微増することができました。ケニーズの事例、10年の推移の注目ポイントは、ADRを下げずにOCCを上昇させ、RevPAR値を8.2倍に引き上げていることです。普通、OCCが爆上がりした場合、ADRは低く設定(安売り)しなければ達成できない為、そこに何らかの要因が介在していると考えられます。

このように需要によって価格が変わることは、経済学の理論でいう需要曲線というもので表せますが、逆にいうと価格設定で需要は操作できるということになります。このことは収益性の改善として10月のテーマ「需要曲線とレベニューマネジメント」と1月「マーケティング(ブランドと差別化、広報戦略)」の項で後述しますが、この需要と供給のバランスを整え、自社のサービスを値付けしていくことこそ、経営者の醍醐味であると感じています。

またRevPAR値を業種で比較した場合、以下のようになります。

前回のADR比較では、キャンプ場はホテルやサンルート新橋と同じくらいの数値でしたが、RevPER値で比較した場合、キャンプ場の値が著しく低下していることが分かります。このグラフだけでは分かり辛いので、以下の項でもう少し検証していきます。

② ADR×RevPARクロス分析

次に、ADRとRevPAR値を他業種と比較したもの示します。  

キャンプ場のADRは、サンルート新橋と同程度であり、相対的に単価が低すぎることはありませんでした。但し、RevPARで見た場合、キャンプ場はその値を大きく落とし、サンルート新橋の生産性の1/5まで減少していることが分かります。ビジネスホテルであるサンルート新橋は、利用しやすい価格や立地の利便性によって、稼働率が87%と高くRevPAR値も高くなったものと考えます。逆にキャンプ場の稼働率は17.5%と低かった為に、RevPAR値を大きく引き下げ生産性が低い結果となりました。

また、ここではグランピングの市場優位性が際立つ結果となっています。グランピングは客単価も高く稼働率も50%程で推移しているため、RevPAR値は21,000円程です。キャンプ場の生産性のなんと10倍です。コロナ過で稼働が激減している宿泊業界の中で、グランピングは密にならないアウトドアということで需要は(ひとまず)伸長を続け、かつ単価も高く生産性が高い為、他の宿泊業や異業種からの新規参入で店舗が続々とオープンするという、現在沸騰中の市場なのではないかと思います。

さらにグランピングはキャンプ場に比べ土地面積をそれほど必要とせず、ビジネスホテルより地価が安く、旅館より固定資産や設備投資がかからないという諸々のデメリットを排除したビジネスモデルでもあるわけです。そりゃ沢山でてくるな~!今後も暫くはその傾向が続くでしょう。さらにホテル業界がそうであったように、もし供給過剰となり需要が減退した場合、リスク回避として所有・運営が分けられた形に推移していくことも充分に考えられます。その時にまた新しいビジネスチャンスがあるわけですね!

因みに、同じように貸し部屋で稼働を算出しているカラオケBOXのRevPAR値は、聞いたところによると8,000円程度となっているようです。キャンプ場よりも4倍生産性が高いです。

業界分析のまとめ

今回は、稼働率とADRの数値だけではキャンプ場の本当の生産性は分からないとし、ホテル業では古くから取り入れられているRevPAR値という係数を新たに取り入れ、キャンプ場の業界分析をしていきました。重要なことなので繰り返しますと、

  • ADRは、「販売された区画の平均単価」
  • RevPARは、「営業日あたりの区画の平均単価」
  • RevPARは「営業日に販売されなかった区画も含めた区画の平均単価」であり、
  • 宿泊業界では最重要の収益性の指標
  • 比較した結果、キャンプ場の生産性はメチャメチャ低い

ということでした。

ではその生産性を今後どうしたら良いのかという問題に対し、解決の手法としては、まずは正確な現状把握から始めよう、ということに尽きると思います。ですので私から業界・皆さまへの提言は

  • キャンプ業界は、RevPERを生産性の指標とすること
  • 自社のRevPERを拠出すること 

を検討して欲しいと思います。

RevPERが見えるようになった暁には、業界平均値や他キャンプ場と比較することができます。自社の現在値が分かれば、具体的なアクションをとることが出来ます。アクションがとれれば数値は必ず改善します。再三になりますが、RevPERを改善するには、稼働率を上げるかADRをあげれば良いのです。そしてこちらも繰り返しになりますが、収益性の改善策としては10月のテーマ「需要曲線とレベニューマネジメント」と1月「マーケティング(ブランドと差別化、広報戦略)」の項で後述しますので、どうぞお楽しみに。

それでは、RevPAR値が低いからと云って、キャンプ場は儲からないと結論づけていいのでしょうか。確かにRevPERは収益性を表す重要な指標ではありますが、キャンプ場を企業活動と捉えた時、それを推し量るうえでもっともっと大切な指標があります。

次回から、企業会計を基に収益性を分析

それは企業会計を基にした分析です。会社は一年に一度、決算という帳簿(簿記)の集大成があります。いくら儲け(損失)を出し、財産がどう変化したかを理解する為のもので、会計書類は3つあります。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 資金繰り表

次回の第5回では、企業会計と損益計算書の考察、9月の第6回では、貸借対照表の考察と動態比率分析をします。そして私が運営に携わるケニーズの事例と共にさらに突っ込んで収益性の分析をしていきたいと思います。

今回も長くなりましたが、最後までご覧いただき有難うございました。何かあれば気軽にご質問ください。それでは、また来月!


執筆者紹介:
川口泰斗(鳥居観光株式会社 統括マネージャー)
埼玉県飯能市にあるケニーズ・ファミリー・ビレッジと古民家ファミリービレッジの両キャンプ場を運営する傍ら、飯能市のキャンプ場連合会の事務局長も務める。