オートキャンプと地方創生⑥~ABUキャンプフィールド~

オートキャンプと地方創生⑥~ABUキャンプフィールド~

2022年3月に山口県阿武町にオープンした『ABUキャンプフィールド(ACF)』。その事業計画は2018年に始まります。一連の事業はキャンプ場を創るのではなく、ヒト・モノ・カネの地域内経済循環を促進することで、阿武町を『選ばれるまち』にすることを目的とした地方創生事業の一環として行っています。今回はまとめとして、これまでの5回の振返りとこれからについてお伝えさせて頂きます。

これまでの5回のコラムで、阿武町の概要、事業の創り方、財源確保、スタッフ研修、遊休キャンプ場リニューアル、メディアを活用した集客、DMO設立と体験プログラムなど、ACFの設立に関わる内容についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?オートキャンプ協会様からのコラム執筆のご依頼に二つ返事でお受けしたものの、構成などを考え出すと思いの外難しく、私自身にとってもこれまでの取組の棚卸しにもなり、良い時間となりました。

前回のコラムで『体験プログラム』についてお伝えしましたが、ACFでは『体験プログラム祭り』と称して、地元事業者さんが提供する様々なプログラムを10/8〜9にキャンパーの皆さんに体験して頂きました。

漁船で行くジオツアー、スウェーデントーチづくり、発酵みそづくり、こんにゃくづくり、魚さばき、神楽体験、農家体験、無角和牛牧場ツアー、キウイ農家体験、水揚げ見学など11種を提供し、120人以上が体験をしました。
漁船でのジオツアーは波が高かったのでショートコースとなってしまい、目的の岬までたどり着けなかったので物足りないかな?と思いましたが、岸壁の地層や養殖いけすの説明など、漁師さんには日常の景観にも、キャンパーの皆さんは日頃見ることのない光景に目を輝かせ、色々と質問もしてくれたことがとても印象的でした。他のプログラムに参加された方からも、喜びの声が聞こえ、ACFを『まちの縁側』称して、コンセプトを『キャンプの先にある暮らしを観てもらう』と設定した方向性が間違っていない事を改めて実感しました。『キャンプ』という媒体を通さなければ来ることがなかった阿武町まで折角来たのであれば、キャンプ場を一歩踏み出した先にある何某かを観たり経験して、更に色々と吸収して頂きたい。そうすると、またキャンプやその土地の魅力にハマっていくのではないかと考えています。

漁師によるジオツアー

神楽体験

チェンソーを使ったスウェーデントーチ作り

農家に教わる収穫体験

ACF設立に向けた一連の事業の大きな流れができてからは、目の前のやるべき事を処理し続ける日々でした。感覚的にはあっという間でしたが、計画から含めると約5年という長い期間、多くの時間を阿武町で過ごしました。こうしてコラムで振り返らせて頂くと様々なステップがあった事が思い出され、随分遠くまで来た感じもします。中山間地域が7割の日本、全国で同じ様な課題や環境の地域も多いことと思います。気持ちの良い景観・環境の中で美味しい食材と共にするキャンプは最高です。

インバウンドも解禁され、キャンプ場を拠点としたアドベンチャーツーリズムなども盛んになってくるこれから、我々はキャンプ場をハブとした周辺のプログラムを作り込みながら、地域の魅力を伝え続けていければと思います。それをきっかけに自然や生産現場に想いを馳せ、持続的に楽しんで暮らせる地域を目指しています。

ABUキャンプフィールド及び阿武町での取組は、全国の中山間地域のモデルになる事も一つの目標に取り組んで参りました。日本オートキャンプ協会様での本コラムが同じ様な課題をお持ちの地域の皆様に少しでも参考になれば幸いです。ご興味ございましたら、山口県阿武町まで視察にいらっしゃってください。現地をご案内しながら、情報交換をさせて頂きます。
インターンや企業様からの出向の受け入れなども行っています。ご質問やご視察、企業研修のご依頼などございましたら、以下までご連絡ください。解る範囲でご対応させて頂きます。

お読み頂き、ありがとうございました。


(執筆)
一般社団法人STAGE 田口壽洋 tag@stage.or.jp

合同会社やもり代表社員、NPO法人自伐型林業推進協会 理事。
1978年生まれ、神奈川県出身。
広告業界、アウトドア業界等を経て、島根県津和野町の自伐型林業集団「津和野ヤモリーズ」や「島根わさびブランド推進協議会」の立ち上げなど、中山間地域での仕事創出のサポートを行政とともに行う。
山口県阿武町では、地域内経済循環を促進する地方創生事業の企画推進などのコーディネートを担い、ABUキャンプフィールドの設立、無角和種のブランディングなど中山間地域での仕事創出に係る各種事業推進に携わっている。